コーヒーに合うチョコレートは?——選ぶのは、チョコではなくコーヒーのほう
コーヒーに合うチョコレートを探している方へ、先に結論を書きます。チョコレートのほうは、好きなものを選んでかまいません。
合わせるのは、コーヒー側です。
私はチョコレートを買うとき、コーヒーに合わせてカカオのパーセンテージを変えたりはしません。チョコレートフェアで気になったものを買う。それだけです。
決めるのは、そのあとです。どのコーヒーを、どう淹れるか。
「合う」とは、どういうことか
似たもの同士だから合うのか。正直なところ、よく分かりません。
チョコレートと生クリームは、まったく性質が違います。片方は固形で、カカオの苦味と甘さがある。もう片方は液体で、乳脂肪のまろやかさがある。それでも、生クリームとコーヒーは合います。似ているから合うわけではない。
お互いがお互いを引き立て合っているから合う。私はそう考えています。
片方が強すぎれば、もう片方は隠れます。両方が同じ方向を向いていれば、ただ重なるだけで終わる。引き立て合うというのは、そのどちらでもない状態のことです。
個性の強いもの同士は、打ち消し合う
コーヒーのブレンドでも、同じことが起きます。
個性の強い豆同士を混ぜると、それぞれの輪郭が消えます。足し算にならない。片方の華やかさが、もう片方の重さに吸われてしまう。だからブレンドを組むときは、何を主役にして、何を支えに回すかを決めます。
チョコレートとコーヒーも同じです。両方の個性が強いと、お互いを消し合う。
となると、個性の強いチョコレートには、おとなしいコーヒーを合わせればいい——と言いたくなりますが、話はもう少し複雑です。
テロワールの個性と、作り手の個性
個性には、2種類あります。
ひとつは、産地や品種から来るものです。どこの畑で、どんな土と気候で育ったか。カカオにも、コーヒーにも、これがあります。テロワールの個性と呼んでいます。
もうひとつは、作り手が持ち込むものです。たとえば、今年のコレクションは日本食がテーマだから山椒を使ってみる、というような。フランスのショコラティエがやるような表現です。
この2つは、同じ「個性が強い」でも、結果が逆になります。
テロワールの個性同士は、打ち消し合います。産地の味を出したチョコレートと、産地の味を出したコーヒー。どちらも背景に土があるので、重なったときに混ざってしまう。
一方で、作り手の表現としての個性は、コーヒーと合う強さだと思っています。山椒はコーヒーの中にない要素です。打ち消し合う相手がいない。
ビーントゥバーは、シードトゥカップに似ている
テロワールの話をするなら、ビーントゥバーに触れないわけにはいきません。
カカオ豆から板チョコレートまでを、ひとつの作り手が一貫して行う。2000年代の初めにアメリカで始まり、日本では2011年ごろから見かけるようになりました。ダンデライオンチョコレートが2013年にサンフランシスコで工房を構えたのが、よく知られた例です。日本にはミニマルがあります。

出典:撮影 TopTropicals.com(Wikimedia Commons)/CC BY-SA 2.0
こうしたチョコレートは、カカオ75%以上のものが多い。そして、チョコレートそのものが上質な酸味を持っています。
コーヒーにも、似た考え方があります。シードトゥカップ——種から一杯まで、という言い方です。
ただし、この2つは同じものではありません。ビーントゥバーは製造を一貫させることを指し、シードトゥカップは栽培から抽出までの全過程を指します。カバーしている範囲が違う。
それでも、作り手が原料から仕上げまでを見通しているという点では、近いところにあります。私たちがロットごとにシングルオリジンを選んでいるのも、同じ方向を向いた話です。
どのラベルを、どう飲むか
ここからは、うちの商品の話をします。
グリーンを、カフェラテにする
グリーンは苦味があって、酸味が少ない。ミルクとの相性がいいラベルです。
カフェラテにしたとき、合わせたいのはブラックサンダーのような甘いチョコレートです。ココアクッキーとビスケットをチョコレートで固めた、はっきり甘いもの。それをカフェラテで流し込む。
ハイカロリーだと分かって食べるものです。それでも、おいしい。
グリーンを、アメリカーノにする
同じグリーンでも、湯で割ってアメリカーノにすると、別の合わせ方になります。
砂糖を入れず、湯で割っただけ。コーヒーの質に意識が向く飲み方です。こういうときに合うのが、さきほどのビーントゥバーです。カカオ75%以上の、酸味を持ったチョコレート。
グリーンは酸味が少ないので、チョコレート側の酸味が邪魔されません。どちらの輪郭も残ります。
イエローとレッドは、ヨーロッパ系のチョコと
ここで注意が要ります。イエローやレッドをアメリカーノにして、ビーントゥバーと合わせたくなりますが、これは打ち消し合います。
どちらもテロワールの個性だからです。さきほどの原則がそのまま当てはまる。
イエローとレッドのアメリカーノは、酸味があってさっぱりしています。ブラックサンダーほどスナックの味ではない。合わせるなら、ゴディバのような、デパートの地下にある高級路線のヨーロッパのチョコレートがいいと思います。
16時を過ぎたら、ブルー
時間帯の話をしておきます。
16時を過ぎてからなら、ラテでもアメリカーノでも、選ぶのはブルーです。カフェインを気にすべき時間だからです。チョコレートと合わせる時間が夜なら、ここは譲れません。
理由は夜のコーヒーの記事に書きました。
濃さと甘さで、まだ変えられる
ラベルと淹れ方だけが変数ではありません。湯の量と砂糖でも変わります。
湯の量で、リセットの強さが変わる
アメリカーノをどれくらい薄めるか。ここはチョコレート側に合わせます。
ボンボンのような濃厚なチョコレートなら、ある程度濃いアメリカーノでないと、コーヒーを飲んでいる感じがしません。チョコレートに押し負けてしまう。
逆に薄い板チョコレートなら、薄めのアメリカーノです。板チョコは口の中で溶ける速度が速い。その余韻を楽しみたいのに、濃いコーヒーで流してしまうと、何も残りません。
口の中をどれくらいリセットするか、という調整です。
砂糖は、失敗の保険にもなる
砂糖はコーヒーの口当たりを優しくします。酸味や苦味が強すぎると感じたとき、少量入れるだけで印象が変わります。
もうひとつ、使い道があります。
買ってきたチョコレートが、思っていた味と違ったとき。個性が強すぎて持て余すことがあります。チョコレートに砂糖を足すわけにはいきませんが、コーヒーには足せる。甘いコーヒーにすれば、組み合わせ全体がまろやかになります。
あとから直せるのは、こちら側だけです。
迷ったら、グリーンから
ここまで書いてきて、選択肢が多すぎると感じた方もいると思います。
迷ったときはグリーンです。酸味が少なく、ミルクにも湯にも対応できる。どのチョコレートに対しても、大きく外しません。
そこから、濃さと甘さで寄せていけば十分です。
一口の大きさで決まることがある
味の話ばかりしてきましたが、もうひとつ基準があります。
一口の大きさです。
サク山チョコ次郎や、きのこの山、たけのこの里。こうした一口サイズのものより、アルフォートやシルベーヌのように2口くらい必要なチョコレートのほうが、コーヒーと合うように思います。
一口で終わってしまうと、コーヒーを飲む前に口の中から消えてしまう。2口分あれば、途中でコーヒーを挟めます。食べて、飲んで、また食べる。その往復の中で、お互いが引き立ちます。
アルフォートは全粒粉入りのビスケットにチョコレートを重ねたものです。ビスケットの香ばしさがコーヒーと重なり、チョコレートの甘さが残る。この構成も効いていると思います。
決めるのは、そのあと
もう一度書きます。チョコレートは、好きなものを買ってください。
その上で、どのコーヒーをどう淹れるかを決める。ミルクを入れるのか、湯で割るのか。どのラベルにするのか。時間帯は何時か。
変えられるのは、そちら側です。
よくあるご質問
Q. コーヒーに合うチョコレートはどれですか
ひとつに決まるものではありません。チョコレートを先に選んで、それに合わせてコーヒーの淹れ方を変えるほうが現実的です。甘いチョコレートならミルクを入れたコーヒー、酸味のあるビーントゥバーなら湯で割ったコーヒー、というように。
Q. カカオ70%以上のチョコにはどんなコーヒーが合いますか
高カカオのチョコレートは、それ自体が酸味を持っています。コーヒー側の酸味が強いと重なりすぎるので、酸味の少ないコーヒーを湯で割って合わせるのが合わせやすいです。
Q. 市販のチョコ菓子でもコーヒーに合いますか
合います。ブラックサンダーのような甘いものは、カフェラテと相性がいい。全粒粉のビスケットが入ったアルフォートのようなものも、コーヒーと重なります。高級チョコレートである必要はありません。
Q. 夜にチョコとコーヒーを合わせても大丈夫ですか
カフェインを気にするなら、16時以降はカフェインレスを選ぶ方法があります。チョコレートにもカフェインは含まれますが、コーヒー側を変えるだけでも量は変わります。
参照元
- 明治: BEAN to BARとは
- All About: チョコレートの楽しみ方が広がる"Bean to Bar"ってなに?
チョコレートとに合うラベル
グリーンラベル 100mlコーヒーらしさの王道。グアテマラ・ホンジュラス・エルサルバドルなど、中米の産地から選んだ、チョコのような深いコクと甘み。ミルクとも好相性。¥1,620 税込・受注生産
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