夜のコーヒーは何時まで?——「眠れた」は、根拠にならない

生エスプレッソの瓶2本と、チョコレートを添えた小皿、コーヒーの入ったカップ

夜にコーヒーを飲むと、睡眠に影響します。就寝の6時間前に飲んだ場合でも、眠っていた時間が短くなったという研究があります。

ただ、眠れたかどうかと、睡眠の質が保たれたかどうかは、別の話です。

そしてカフェインが入っていないなら、この話の前提そのものが変わります。

私は毎日、16時を過ぎたらコーヒーを飲みません。飲むならカフェインレスにしています。

ただ、カフェインのせいで眠れなくなった経験は、一度もないんです。

夜のコーヒーは、何時までなら大丈夫か

先に、カフェインが体の中で何をしているかを書いておきます。あとの話がつながるので。

脳にはアデノシンという物質があります。起きている時間が長くなるほど溜まっていって、神経の働きを抑える。これが眠気の正体です。アデノシンには受け皿にあたる場所があって、そこに結合すると、脳の活動が落ちていきます。

カフェインは、このアデノシンによく似た形をしています。

似ているので、受け皿に先に座ることができる。ただし座るだけで、アデノシンのようには働きません。眠気の信号が届かなくなります。

ここが大事なところです。カフェインは、アデノシンを減らしているわけではありません。溜まるものは、ブロックの下で溜まり続けている。

眠気を消しているのではなく、眠気を感じにくくしている。

カフェインが切れたときに一気に眠くなるのは、そのあいだに溜まっていたアデノシンが、空いた受け皿に一斉に結合するからだと説明されています。

では、そのカフェインはどれくらい体に残るのか。

半分が抜けるまでの時間を半減期といって、だいたい2.5時間から5時間とされています。

ただ、この幅が問題です。

肝臓にCYP1A2という酵素があって、カフェインの9割以上はこれが分解します。この酵素の働きは遺伝で決まっていて、速い人は3〜4時間、遅い人は5時間から7時間以上かかる。喫煙や妊娠、常用している薬でも変わります。

同じ一杯を飲んでも、体に残っている時間が倍近く違うということです。

16時に飲んだコーヒーが、人によっては23時にもまだ半分残っている。

だから「何時まで」に、全員に当てはまる答えはありません。あるのは目安と、自分で決めた線だけです。

私の線は16時です。

「眠れた」は、根拠にならない

16時を意識するようになったのは、2023年ごろからでした。

デスクワークが増えて、頭を使う時間が長くなった。生活習慣を見直していた時期です。本を読んだり、動画を見たり。カフェインと睡眠の話も、そのどこかで入ってきたものでした。

正直に書くと、どの本だったかは覚えていません。「夕方以降は避けたほうがいい」と、漠然と知っただけです。

この記事を書くにあたって調べ直したら、こういう研究がありました。

2013年、アメリカの睡眠医学の学術誌に載ったものです。健康な12人に、カフェインを400mg——コーヒーにして2〜3杯分——飲んでもらう。寝る直前、3時間前、6時間前の3パターンで。

6時間前に飲んだ場合でも、実際に眠っていた時間が1時間以上短くなっていました。

面白いのは、その先です。

本人たちは、眠りが妨げられたことに気づいていませんでした。

自分では普通に眠れたつもりでいて、測ってみると短くなっている。

眠れた感じがすることと、睡眠の質が保たれていることは、別だということです。

そうすると、私がカフェインで眠れなくなった経験がないことは、影響がなかったことの証明になりません。気づいていないだけかもしれない。

16時を守っているのは、眠れなくなるからではありません。眠れるかどうかでは判断できないと知ったからです。

では、控える理由はどこにあるのか

ここまで書いてきたことは、全部カフェインの話です。

夜のコーヒーを控えるのは、コーヒーが夜に向かないからではありません。カフェインが睡眠に影響するからです。

順序を逆にしてみます。

カフェインが入っていないなら、飲むべきでない理由は存在しない。

夜のコーヒーについて書かれた記事をいくつも読みましたが、どれも「どう制限するか」の話でした。何時までならいいか、どう工夫すれば影響を減らせるか。制限することが前提になっている。

その前提を外すと、話が変わります。

夜に飲みたくなる場面は、ひとつではない

食後にコーヒーが飲みたくなることは、そもそもよくあります。昼食のあとも、夕食のあとも同じです。違うのは時間帯だけ。

北欧には、フィーカという時間があります。コーヒーと甘いものを囲んで、人と話す。仕事の手を止めて同僚と、あるいは家で一人で。決まった時間帯があるわけではなく、朝にも午後にも、夜にもとられるそうです。エスプレッソトニックが生まれたのも、この地域でした。

誕生日会は、たいてい夜にやります。ケーキが出る。

そこでコーヒーを飲みたい人は、少なくないはずです。甘いものとコーヒーの相性は、昼と夜で変わりません。変わるのは、こちらの都合だけです。

どのチョコレートに何を合わせるかは、別の記事に書きました。

それから、これは個人的な意見ですが。

アフォガードは、風呂上がりが一番おいしい。

アイスを食べるタイミングとして、風呂上がりに勝るものはないと思っています。そこにエスプレッソをかけると、安いアイスでも最高のアイスに変わる。食べ方は別の記事に書きました。

風呂上がりは夜です。カフェインの話をすれば、本来は避ける時間帯にあたります。カフェインレスなら、その不安もありません。

カフェインレスは、いつから美味しくなったのか

カフェインレスはおいしくない。長いあいだ、そう言われてきました。

ここ十数年で変わっています。豆が変わったのではなく、抜き方が変わったからです。

最近のものを飲んで、驚きました。これなら夜の一杯として成立する、と思えるものが出てきている。

どうやって抜くのか、どう選ぶのかは、カフェインレスコーヒーの記事にまとめました。製法によって残るものが違うので、選ぶときはそこを見ます。

なぜ、カフェインレスを瓶に詰めたのか

ブルーラベルを作った理由は、夜のためというより、妊娠中の方のためという動機のほうが大きかったです。

そういう場面に出会うことが、増えてきました。

妊娠中はカフェインの代謝が遅くなります。さきほどのCYP1A2の働きが下がるので、同じ量を飲んでも体内に長く残る。海外の機関が妊娠中の方向けに目安量を示しているのは、そのためです。

数値まで書くと、医学の話に踏み込みすぎます。ここでは、そういう理由で作った、とだけ書いておきます。

夜に飲むなら、何を選ぶか

ブルーラベルは、浅煎りから中煎りのシングルオリジンを、水で抜いた豆から選んでいます。マウンテンウォータープロセスか、スイスウォータープロセス。ロットによって変わります。

ストレートでも、ミルクと合わせても。瓶から注ぐだけなので、淹れる手間はかかりません。

カフェインがどれくらい残っているかは、測ったことがないので書けません。カフェインレスと表示できるのは9割以上抜いたものですが、ゼロではない。そこは正確に書いておきます。

16時を過ぎてから

16時を過ぎてコーヒーが飲みたくなったとき、諦める必要はありません。

控える理由がなくなった飲み物を、夜の食卓に戻すだけです。

よくあるご質問

Q. 夜にコーヒーを飲むと眠れなくなりますか

人によります。カフェインの分解にかかる時間は遺伝で差があり、速い人は3〜4時間、遅い人は5時間以上かかります。ただ、2013年の研究では、就寝6時間前にカフェインを摂った場合でも睡眠時間が短くなり、しかも本人はそれに気づいていませんでした。眠れたかどうかだけでは判断できない、というのがこの研究の示すところです。

Q. コーヒーは何時までなら飲んでいいですか

全員に当てはまる時刻はありません。先ほどの研究は午後5時以降を避けることを推奨しています。私自身は16時を目安にしています。自分が何時に寝るか、分解が速いほうか遅いほうかで、線の引き場所は変わります。

Q. カフェインレスコーヒーなら夜に飲んでも大丈夫ですか

カフェインが睡眠に影響するという前提に立つなら、それが抜いてあるものを避ける理由はありません。ただし「カフェインレス」と表示できるのは9割以上を取り除いたもので、まったくのゼロではありません。気になる方は製法の表示を確認してください。

Q. 妊娠中でもカフェインレスなら飲めますか

妊娠中はカフェインの分解が遅くなるため、海外の機関が目安量を示しています。カフェインレスはその選択肢のひとつですが、量や体調の判断は医師にご相談ください。

参照元

夜のコーヒーに合うラベル

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