読み物
モカポットとは?使い方と、えぐみを出さない淹れ方のコツ
モカポットでエスプレッソは作れません。それでも私は、業務用マシンを持ちながらこの道具で淹れます。基本の使い方と分量の目安、温度を制する独自の淹れ方「コールドプレインフュージョン」、洗い方まで。
モカポットとは?使い方と、えぐみを出さない淹れ方のコツ
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アイスラテとは?氷を使わない作り方と、薄まらない一杯のコツ
この記事のアイスラテは、氷を使いません。最後の一口まで味の輪郭が残る作り方、牛乳の選び方、ガムシロップの一滴の仕事、氷と遊ぶアイスエスプレッソまで。夏の朝の一杯に。
アイスラテとは?氷を使わない作り方と、薄まらない一杯のコツ
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ソイラテとは——作り方と、コーヒーに合う植物性ミルクの選び方
先に白状すると、一番美味しいのは牛乳。それでも植物性ミルクのラテには、選ぶ楽しみがあります。ソイラテの作り方から4本の実飲比較まで、イラスト付きの相性ガイド。
ソイラテとは——作り方と、コーヒーに合う植物性ミルクの選び方
先に白状すると、一番美味しいのは牛乳。それでも植物性ミルクのラテには、選ぶ楽しみがあります。ソイラテの作り方から4本の実飲比較まで、イラスト付きの相性ガイド。
カフェインレスコーヒーとは——テロワールが残るデカフェの時代
「どうせ味は落ちる」と思われてきたカフェインレス。抜き方の進化で、産地の個性が残る時代が来ています。水抽出法の仕組みと、夜の一杯の選び方をご案内します。
カフェインレスコーヒーとは——テロワールが残るデカフェの時代
「どうせ味は落ちる」と思われてきたカフェインレス。抜き方の進化で、産地の個性が残る時代が来ています。水抽出法の仕組みと、夜の一杯の選び方をご案内します。
エスプレッソ・コン・パンナとは——家でも、バールでも、大人の食後の一杯
エスプレッソ・コン・パンナは、エスプレッソに無糖のホイップクリームをひと匙のせた、イタリア生まれの一杯です。食後の小さなご褒美として楽しまれています。ミルク入りコーヒーは朝のもの、とされるイタリアで、なぜこの一杯だけは食後に許されているのか——そこに、この飲み物の性格が出ています。 はじめてエスプレッソ・コン・パンナを知ったのは、18歳のアルバイト先でした。海外から来たお客さまが、食後にこの一杯を注文されました。エスプレッソに、冷たいクリームをひと匙。——食後のコーヒーに、なぜクリームを浮かべるのでしょうか。 エスプレッソ・コン・パンナとは何か——「クリーム入り」のイタリアのコーヒー イタリア語で caffè con panna。「クリーム入りコーヒー」という意味です。イタリアのバールで caffè と言えばエスプレッソを指しますから、エスプレッソにパンナ(クリーム)をのせた一杯、ということになります。英語圏では espresso con panna、フランスでは café viennois——「ウィーン風カフェ」と呼ばれることもあります。 この「ウィーン風」という呼び名は、由来を正直に映しています。コーヒーにクリームをのせる発想はイタリア土着のものではなく、18〜19世紀のウィーンのカフェ文化から来ています。当時オーストリア領だった北イタリア、とくにトリエステを通じてこの飲み方が伝わり、20世紀にエスプレッソマシンが普及すると、エスプレッソの一変種として定着しました。 出典:Reinhold Völkel「Café Griensteidl」1896年(Wikimedia Commons)/パブリックドメイン 面白いのは、イタリアの権威ある食の辞典にも、19世紀の有名な料理書にも、コン・パンナという項目が見当たらないことです。つまりこれは「文献に残る古い伝統」ではなく、「現代のバールで当たり前に作られている習慣」に近い。何世紀も続く格式ある一杯、と紹介したくなるところですが、実際はもっと気軽な、日常の中の飲み物です。 コン・パンナは、いつ飲まれているのか——家でも、バールでも 食後に、もう一杯コーヒーが欲しい。ただ、カプチーノは胃に少し重いし、エスプレッソだけでは物足りない。そんなときにイタリアのバール(エスプレッソを立ち飲みするカフェ・スタンド)で頼まれてきたのが、コン・パンナです。 イタリアのコーヒー文化には、ミルク入りのコーヒーは朝のもの、という不文律があります。カプチーノやカフェラテを食後に頼むと、それだけで旅行者だと分かる、と言われるほどです。ミルクは食後の胃に重い、という感覚が浸透しています。 コン・パンナは、この不文律のなかで許されている例外です。ミルクではなくクリームをひと匙。飲み物というよりデザートに近い扱いで、パスティチェリア(菓子店)やバールでは、食後の小さな甘いものと並んで出されます。食後酒ほど格式ばらず、それでいて食事の締めくくりになる。コーヒーとデザートの中間の席に、ちょうど収まる一杯と言えます。 この一杯は、家でも再現できます。用意するのは、エスプレッソと冷たいクリームだけ。食後のテーブルで、小さなカップに注いで、クリームを浮かべる。夏の夜は冷たいまま、冬は少し温めて。バールで生まれた一杯を、家の食後にそのまま持ち込めます。 共通しているのは、急いで飲まないことです。エスプレッソを一息で飲み干すのとは違って、コン・パンナは食後の時間を少しだけ引き延ばします。その数分が、この一杯の値打ちだと思います。 コン・パンナは、どう作るのか——核心は温度コントラスト バールの正統な作り方は、シンプルです。淹れたてのエスプレッソに、無糖の生クリームを軽く泡立てて(角が立つ手前、とろりとしたソフトピークまで)、ひと匙のせる。小さなデミタスカップで、混ぜずに出されます。クリームは乳脂肪 35〜38% のものを、砂糖を入れずに使います。甘さは足しません。エスプレッソの苦味と、クリームがもともと持っている乳の甘さ。その対比だけで成立させるのが、イタリアの流儀です。海外のコーヒーチェーンではホイップに甘みをつけた版が出てくることも多いのですが、正統は無糖の側にあります。...
エスプレッソ・コン・パンナとは——家でも、バールでも、大人の食後の一杯
エスプレッソ・コン・パンナは、エスプレッソに無糖のホイップクリームをひと匙のせた、イタリア生まれの一杯です。食後の小さなご褒美として楽しまれています。ミルク入りコーヒーは朝のもの、とされるイタリアで、なぜこの一杯だけは食後に許されているのか——そこに、この飲み物の性格が出ています。 はじめてエスプレッソ・コン・パンナを知ったのは、18歳のアルバイト先でした。海外から来たお客さまが、食後にこの一杯を注文されました。エスプレッソに、冷たいクリームをひと匙。——食後のコーヒーに、なぜクリームを浮かべるのでしょうか。 エスプレッソ・コン・パンナとは何か——「クリーム入り」のイタリアのコーヒー イタリア語で caffè con panna。「クリーム入りコーヒー」という意味です。イタリアのバールで caffè と言えばエスプレッソを指しますから、エスプレッソにパンナ(クリーム)をのせた一杯、ということになります。英語圏では espresso con panna、フランスでは café viennois——「ウィーン風カフェ」と呼ばれることもあります。 この「ウィーン風」という呼び名は、由来を正直に映しています。コーヒーにクリームをのせる発想はイタリア土着のものではなく、18〜19世紀のウィーンのカフェ文化から来ています。当時オーストリア領だった北イタリア、とくにトリエステを通じてこの飲み方が伝わり、20世紀にエスプレッソマシンが普及すると、エスプレッソの一変種として定着しました。 出典:Reinhold Völkel「Café Griensteidl」1896年(Wikimedia Commons)/パブリックドメイン 面白いのは、イタリアの権威ある食の辞典にも、19世紀の有名な料理書にも、コン・パンナという項目が見当たらないことです。つまりこれは「文献に残る古い伝統」ではなく、「現代のバールで当たり前に作られている習慣」に近い。何世紀も続く格式ある一杯、と紹介したくなるところですが、実際はもっと気軽な、日常の中の飲み物です。 コン・パンナは、いつ飲まれているのか——家でも、バールでも 食後に、もう一杯コーヒーが欲しい。ただ、カプチーノは胃に少し重いし、エスプレッソだけでは物足りない。そんなときにイタリアのバール(エスプレッソを立ち飲みするカフェ・スタンド)で頼まれてきたのが、コン・パンナです。 イタリアのコーヒー文化には、ミルク入りのコーヒーは朝のもの、という不文律があります。カプチーノやカフェラテを食後に頼むと、それだけで旅行者だと分かる、と言われるほどです。ミルクは食後の胃に重い、という感覚が浸透しています。 コン・パンナは、この不文律のなかで許されている例外です。ミルクではなくクリームをひと匙。飲み物というよりデザートに近い扱いで、パスティチェリア(菓子店)やバールでは、食後の小さな甘いものと並んで出されます。食後酒ほど格式ばらず、それでいて食事の締めくくりになる。コーヒーとデザートの中間の席に、ちょうど収まる一杯と言えます。 この一杯は、家でも再現できます。用意するのは、エスプレッソと冷たいクリームだけ。食後のテーブルで、小さなカップに注いで、クリームを浮かべる。夏の夜は冷たいまま、冬は少し温めて。バールで生まれた一杯を、家の食後にそのまま持ち込めます。 共通しているのは、急いで飲まないことです。エスプレッソを一息で飲み干すのとは違って、コン・パンナは食後の時間を少しだけ引き延ばします。その数分が、この一杯の値打ちだと思います。 コン・パンナは、どう作るのか——核心は温度コントラスト バールの正統な作り方は、シンプルです。淹れたてのエスプレッソに、無糖の生クリームを軽く泡立てて(角が立つ手前、とろりとしたソフトピークまで)、ひと匙のせる。小さなデミタスカップで、混ぜずに出されます。クリームは乳脂肪 35〜38% のものを、砂糖を入れずに使います。甘さは足しません。エスプレッソの苦味と、クリームがもともと持っている乳の甘さ。その対比だけで成立させるのが、イタリアの流儀です。海外のコーヒーチェーンではホイップに甘みをつけた版が出てくることも多いのですが、正統は無糖の側にあります。...
アフォガードとは——「溺れた」の名を持つデザートと、最高の食べ方
アフォガードは、アイスクリームにエスプレッソを注いだ、イタリア生まれのデザートです。ただし、この記事でご紹介したい食べ方は、世の中の一般的な作り方と少し違います。 熱々のエスプレッソを30ml注ぐ——本当にそれが、最高の食べ方でしょうか。 アフォガードとは何か——「溺れた」という名のイタリア菓子 アフォガード(affogato)は、イタリア語で「溺れた」を意味する言葉です。動詞 affogare(溺れる)の過去分詞で、さかのぼればラテン語の offōcāre に行き着きます。エスプレッソを注がれたアイスクリームが、コーヒーの中に溺れていく。その様子からついた名前だと言われています。 発祥には諸説あります。食後の締めくくりとして親しまれたというエミリア=ロマーニャ説。朝の活力源だったとするピエモンテ説。トリノのカフェでエスプレッソとジェラートが偶然出会ったという説。中世ピエモンテの修道士アンジェリコに由来を求める説まであって、はっきりした起源は分かっていません。 記録に現れるのは19世紀末から20世紀初頭。イタリア全土に広まったのは1950年代で、アイスクリームの工業化が進んだ時期と重なります。1992年にはアメリカの辞書 Merriam-Webster に英語として収録されました。いまでは世界中のカフェメニューで見かける、イタリア生まれの定番デザートになっています。 アフォガードの本質は、どこにあるのか 世の中のアフォガードのレシピを見ていると、エスプレッソを熱々のままアイスにたっぷり注ぐ、というやり方が標準になっています。ただ、この作り方には、ひとつ気になる点があります。アイスがすぐに溶けて、エスプレッソと液体として混ざってしまうことです。 液体同士で混ざってしまったあとに残るのは、ただの甘く冷たく高濃度なコーヒーミルクだと思います。これはこれで飲み物として悪くないですし、コーヒーミルクが好きな方にとっては正解の一つになります。ただ、アフォガードという料理がもともと持っていた魅力は、ここではないと思っています。 アフォガードが面白いのは、アイスクリームとエスプレッソが完全には混ざらず、それぞれの形を保ったまま、口の中で同居する瞬間にあります。半固形のアイスと、液体のエスプレッソ。質感の違うふたつが、ひと匙のなかで隣り合う。これが「共存」の意味です。 イタリア語の affogato は「溺れた」を意味する動詞の過去分詞で、アイスがエスプレッソに溺れる、というイメージから名前が付きました。けれども、本当に溺れさせてしまうと、共存は終わってしまいます。少しずつ溺れていく途中の状態こそが、アフォガードがアフォガードである時間だと思います。 飲み物でも食べ物でもない、と言われることがあります。これはそのまま、アフォガードの構造を言い当てています。液体だけの体験でも、固形だけの体験でもなく、両方が共存しているからこそ、そう呼ばれるのだと思います。 最高のアフォガードの食べ方とは——冷たいまま、少しずつ 世の中のレシピの多くは、淹れたての熱いエスプレッソを 30ml ほど、アイスの上からひと息に注ぎます。この作り方だと、熱でアイスは一気に溶けていきます。共存の時間は短い。 家で作るときは、こうしています。冷たいままのエスプレッソ 15ml を、アイスに少しずつ垂らす。 イメージしていただきたいのは、美味しい寿司屋の醤油です。ネタを醤油にどぼんと浸けるのではなく、刷毛でさっと塗る。あの要領で、エスプレッソを注ぐのではなく、アイスに「塗る」ように少しずつかけていきます。 こうすると、アイスはほとんど溶けません。半固形のアイスの表面に、エスプレッソの凝縮したフレーバーがそのまま乗ります。垂らしては、すくう。アイスとエスプレッソが共存した状態を、最後のひと口まで保てます。 この食べ方の条件は、ひとつだけです。冷やしても風味の落ちていないエスプレッソが、手元にあること。エスプレッソは抽出した瞬間から風味が変わりはじめる飲み物なので、淹れたての熱々をその場で飲むのが当たり前とされてきました。冷たいまま使うという選択肢は、実はあまり知られていません。 私たち...
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アフォガードは、アイスクリームにエスプレッソを注いだ、イタリア生まれのデザートです。ただし、この記事でご紹介したい食べ方は、世の中の一般的な作り方と少し違います。 熱々のエスプレッソを30ml注ぐ——本当にそれが、最高の食べ方でしょうか。 アフォガードとは何か——「溺れた」という名のイタリア菓子 アフォガード(affogato)は、イタリア語で「溺れた」を意味する言葉です。動詞 affogare(溺れる)の過去分詞で、さかのぼればラテン語の offōcāre に行き着きます。エスプレッソを注がれたアイスクリームが、コーヒーの中に溺れていく。その様子からついた名前だと言われています。 発祥には諸説あります。食後の締めくくりとして親しまれたというエミリア=ロマーニャ説。朝の活力源だったとするピエモンテ説。トリノのカフェでエスプレッソとジェラートが偶然出会ったという説。中世ピエモンテの修道士アンジェリコに由来を求める説まであって、はっきりした起源は分かっていません。 記録に現れるのは19世紀末から20世紀初頭。イタリア全土に広まったのは1950年代で、アイスクリームの工業化が進んだ時期と重なります。1992年にはアメリカの辞書 Merriam-Webster に英語として収録されました。いまでは世界中のカフェメニューで見かける、イタリア生まれの定番デザートになっています。 アフォガードの本質は、どこにあるのか 世の中のアフォガードのレシピを見ていると、エスプレッソを熱々のままアイスにたっぷり注ぐ、というやり方が標準になっています。ただ、この作り方には、ひとつ気になる点があります。アイスがすぐに溶けて、エスプレッソと液体として混ざってしまうことです。 液体同士で混ざってしまったあとに残るのは、ただの甘く冷たく高濃度なコーヒーミルクだと思います。これはこれで飲み物として悪くないですし、コーヒーミルクが好きな方にとっては正解の一つになります。ただ、アフォガードという料理がもともと持っていた魅力は、ここではないと思っています。 アフォガードが面白いのは、アイスクリームとエスプレッソが完全には混ざらず、それぞれの形を保ったまま、口の中で同居する瞬間にあります。半固形のアイスと、液体のエスプレッソ。質感の違うふたつが、ひと匙のなかで隣り合う。これが「共存」の意味です。 イタリア語の affogato は「溺れた」を意味する動詞の過去分詞で、アイスがエスプレッソに溺れる、というイメージから名前が付きました。けれども、本当に溺れさせてしまうと、共存は終わってしまいます。少しずつ溺れていく途中の状態こそが、アフォガードがアフォガードである時間だと思います。 飲み物でも食べ物でもない、と言われることがあります。これはそのまま、アフォガードの構造を言い当てています。液体だけの体験でも、固形だけの体験でもなく、両方が共存しているからこそ、そう呼ばれるのだと思います。 最高のアフォガードの食べ方とは——冷たいまま、少しずつ 世の中のレシピの多くは、淹れたての熱いエスプレッソを 30ml ほど、アイスの上からひと息に注ぎます。この作り方だと、熱でアイスは一気に溶けていきます。共存の時間は短い。 家で作るときは、こうしています。冷たいままのエスプレッソ 15ml を、アイスに少しずつ垂らす。 イメージしていただきたいのは、美味しい寿司屋の醤油です。ネタを醤油にどぼんと浸けるのではなく、刷毛でさっと塗る。あの要領で、エスプレッソを注ぐのではなく、アイスに「塗る」ように少しずつかけていきます。 こうすると、アイスはほとんど溶けません。半固形のアイスの表面に、エスプレッソの凝縮したフレーバーがそのまま乗ります。垂らしては、すくう。アイスとエスプレッソが共存した状態を、最後のひと口まで保てます。 この食べ方の条件は、ひとつだけです。冷やしても風味の落ちていないエスプレッソが、手元にあること。エスプレッソは抽出した瞬間から風味が変わりはじめる飲み物なので、淹れたての熱々をその場で飲むのが当たり前とされてきました。冷たいまま使うという選択肢は、実はあまり知られていません。 私たち...